妄想少女オタク系

"明るいことが恐ろしい"を超える、"恐ろしいことが明るい"作品。
恋が盲目という言葉があるように、恋は宗教に似たニュアンスを持っている。
また、恋の病という言葉もあるように、恋するメカニズムは病気にも近い構造もあるんだろう。

保菌者であり天然の教祖である主人公が、本来個人的なものであるはずの嗜好(それは本当に信仰も全くそうであるはずだけど)を無意識でばら撒きパンデミックさせていく。反発している人間すらも知らず知らずどう見ても感染している。

「ミッドサマー」がシンプルで短絡的な映画なのではないか?とすら思ってしまうほどに巧妙に(なのか、天然でやってるのかわからないのが堀禎一だ…)バレぬようさりげなく、バレぬよう複雑に、バレぬようどこまでも底抜けにばかばかしく、稚拙に見せかけ、俺たちにとって"非そして反"であった価値観を倒錯させてくる。
「みんなどうしちまったんだよ」と冷笑する自分がいつのまにか「爽やかでかわいい」と微笑んでいることの怖さ。"強引に強姦"なんて言葉は笑えないはずなのだ。

しかしたとえばそんなことを必死に訴えたところで、この映画は青春ラブコメディでしかないのも事実である。なにムキになってんだよと言われたらそれで終わりだ。

ラストシーンの歪な愛のセリフ、"到達の不可能"と"到達した成功"が同時に成立することなんかあるのか。表と裏を同時に見たようなものだ。いつからこうなったんだ。気付いたらそうなっていたのだ。ギリギリ自我が残っているうちに殺してほしい。

 

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